終了
REPORT

IUI領域横断フィールドワーク「江戸キリシタン遺跡の巡礼」

2022年11月19日(土)都内各所(浅草〜品川)
  • 領域横断フィールドワーク
IUI領域横断フィルドワークポスター デザイン:湯田冴

東京のど真ん中にキリシタン遺跡があることをご存知ですか。横浜国立大学都市科学部/大学院都市イノベーション学府・朴スタジオでは「日本の中の異文化」を探しに都市を歩きます。場所は浅草から品川まで!日本に初めてキリスト教が伝わったのは、1549年に宣教師フランシスコ・ザビエルの布教活動からでした。しかし、その後、徳川幕府によるキリスト教禁制のもとでキリシタンに対する大規模の迫害が続きます。わたしたちにとって、こうした江戸の殉教者たちは忘れ去られていますが、彼らの足跡は大都市東京の中心にしっかり残っています。キリシタンが潜伏した浅草・鳥越、拘禁が行われた伝馬町牢屋敷の跡、火刑に処された札の辻刑場など。キリシタンゆかりの地を訪ねる今回のフィールドワークでは、浅草教会を出発し、キリシタンたちが伝馬町牢屋敷から処刑場まで引き回された日本橋、新橋、田町を歩き通り、高輪教会前で解散します。こうしたキリシタン遺跡巡礼からさらには、江戸という都市のあり方や近代東京の変化なども再発見することができます。現在も開発され続ける東京の街並みの魅力を感じるとともに、江戸の先祖たちの崇高なる生き方について考える機会になればと思います。

日程

2022年11月19日(土)10:00〜17:00

レポート

いつも東京へ行くときには、目的地を検索し、最寄りの駅を調べて、最短の時間とルートで到着できるように電車に乗る。だから自分の体に疲労感として移動距離が刻まれることはないように思う。しかしこの日のツアーは、10キロという長距離を一日かけて歩く。足の裏にずんずん地面を感じながら、少しずつ疲れていくのが心地良くもあった。

浅草・鳥越きりしたん殉教記念碑(写真:佐藤駿)

最初に訪れたカトリック浅草教会にて神父さんがしてくださったお話を頭の中で反芻していた。「殉教」がどういったものだったか。自分の信じることを貫く選択をすることは現在も行われている。十思公園には時代を超えた石碑がいくつも建ち並ぶ。かつてこの地で強い思想を貫き行動した人たちがいたこと…今は公園となって子どもたちが遊ぶ穏やかな場所だけれど、そんな些細な日常の中にもレベルは違えど皆選択をしながら生きているのだということを実感する。

殉教者たちが歩いた道をたどる(日本橋周辺)(写真:佐藤駿)

日本橋を越え、煌びやかなお店が建ち並ぶ大きな通りを歩く。かつて囚人とされた人々が処刑場まで見せしめのために引きずられたという通りは今もたくさんの人で賑わう街並みだ。なぜ残酷な殺され方をしなければならなかったのか、理解することはできないと思いながら、でもきっと今とそう変わらない地形や景色の中でそれは行われたのだろうということが想像できた。歩くことは、当時の人々の見ていた景色を確認していく作業だと思った。札の辻のあたりで、住友ビルの裏の小高い丘に登る。ここで処刑が行われたらしい。「小高い丘を登る」という同じ身振りでも、かつて死を目前にした人々と、その碑を訪れた私たち。距離と地形は変わらず佇み、きっとこれから先もそこに人々が刻んできた歴史を繋ぎ続けるのだろう。

札の辻近く、処刑場の丘からかつての江戸を想像する(写真:佐藤駿)

レポート:今井亜子(Y-GSC)