レポート
オンラインを通じて、コロナ禍をはさんだ3年間の制作活動のレクチャーをしていただき、都市とのつながりについて現地の参加者とともにディスカッションを行った。1年目は、上京した佐藤さんがまちを歩き、目で見て肌で感じた無力な東京。2年目は、非人間なるものとしてカラスの身体を借りてみえてきた東京。この2年間を踏まえ、3年目から今日にかけて、東京に在る自分の生きがいについて模索している姿がレクチャーを通じて見えてきた。
佐藤さんはレクチャーで何度も岡本太郎の言葉を読みあげた。そのたびに参加者は呼吸するのを忘れ、オンライン/現地、個人/他者…その境界線を見失うかのように佐藤さんのフィルターに同化していく、そんな感覚を得た。
ディスカッションでは、レクチャーを踏まえ参加者の質問や感想を投げかけた。東京との物理的-精神的距離の異なりについての議論が展開され、佐藤さんの都市に対する感覚と、参加者個人の都市に対する感覚が混じりあった濃密な時間となった。佐藤さんは「もう一つの東京を想像する」ことで見えてくる「オバケ東京」の姿を「私」のフィルターで咀嚼することに強いこだわりを持っていた。
都市をフィールドに研究する私たちは「都市と私、私と都市、私が都市、都市の私」の感覚を知らず知らずに身体化させているように思う。レクチャーを通じて、自身に浸透したフィルターに他者のフィルターを潜り込ませる経験をした。身体化された感覚を見つめ直し、分解し、言語化し、共有し、疑問を交差させ再構築する。そうした経験の積み重ねが、研究者のフィルターに多様な色や光を生みだすのではないだろうか。
担当:小山萌絵(都市地域社会専攻 都市地域社会系)