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REPORT

IUI展2022-2023 「福島の大地から 物質的・身体的経験」 キヨスヨネスク(俳優|Y-GSC)

2023年3月3日(金)13:00~14:15IUIホール
  • 領域横断レクチャー

福島県浜通り地域で継続的なフィールドワークと創作を行っている俳優のキヨスヨネスクによる、福島の大地についてのレクチャーです。原発事故後の福島において放射性物質という不可視の存在は、場所と身体の関係においてどのような知覚をもたらしたのか。人間のスケールを超えた時間と物質の関係を実際の体験から考察します。特に、帰還困難区域内で、遺骨捜索を続ける木村紀夫氏と、沖縄の遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松氏との交流、それぞれの自然への眼差しを通して、福島の土地の経験がもつ意味を身体から考えます。

※要登録 https://forms.gle/eS8apEPay1DPxhEr5

プロフィール

キヨスヨネスク 1992年生まれ。俳優。演劇ユニット「humunus」(フムヌス)で活動。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府博士課程前期在籍中。土地やランドスケープを条件づけている種々の要素を観察し、それらをいかに声-身体を通してうつしとることができるか、その方法化と実践を行う。現在、福島県富岡町と東京との2拠点で活動。ユニットでの主な作品はツアー演劇「うつほの襞/漂流の景」、上演+展示企画「<砌と船>うつつ、揺蕩い」、映像作品「荒川平井住宅」など。

 

横浜国立大学IUIホール(全学共用棟B【N7-2】)https://goo.gl/maps/VoPBkiCY7J1Lh2V98

横浜国立大学へのアクセス https://www.ynu.ac.jp/access/

レポート

福島県浜通り地域で継続的にフィールドワークと創作を行っているY-GSC所属の俳優のキヨスヨネスクさんから、福島はどのように放射能汚染を経て変化したのかについて、身体の経験から考えるレクチャーが行われた。レクチャーでは、実際にキヨスさんがフィールドワークを行うなかで目にしたフレコンバックの積み上がった帰宅困難区域や福島第一原発の様子が紹介され、その後に福島で次女の遺骨収集を続ける木村紀夫さんと、その捜索に協力する沖縄の遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんの活動を中心にお話を聞いた。

レクチャーの様子(写真:湯田冴)

遺骨収集は、土地の傾斜や植生の状況と深く関わっている。沖縄のガマで遺骨収集を続ける具志堅隆松さんは、福島のフィールドでもその確かな観察眼で木村さんが探し続けた遺骨を発見した。具志堅さんが沖縄で遺骨の捜索をする際に、場の状況を見て亡くなった状況をなぞった時の身体の動きがキヨスさんによって再演され、遺骨収集は骨という物質を探すのではなく、その身体をまるごと掘り起こしていく営みであると感覚した。

レクチャーの様子(写真:湯田冴)

また、被災者の喪や供養としての遺骨収集の場が、巨大防波堤の建設や汚染土の処理によって変わりゆくことへの木村さんの抵抗とどのように連帯できるのだろうとレクチャーを通して考えた。現地で表現者として福島に通い続けるキヨスさんは、福島でのツアーパフォーマンスや映像制作を通じて土地に人を招き入れ、その身体的経験を通じて福島の現状を伝えることで木村さんをはじめとする被災者にコミットしている。レクチャーを経て、放射能汚染という人間の一生より長い時間で向き合わなければならない土地の経験と、そこに生きる人々を身体から知り、福島を訪れた際に自分の身体からこの続きを考えたいと思った。

レクチャーの様子(写真:湯田冴)

レポート:湯田冴(Y-GSC)

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