都市から奈良の里山へと移り住み自給自足生活する東千茅さんと、地域のコミュニティガーデンを活用しながらNYに一年間滞在した遠藤麻衣さんをお呼びして、お二人のそれぞれの場所での実体験を聞きながら、自分一人だけでなく周りを取り囲む他者の多様性を保ったまま共に生き延びる方法を考えます。
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プロフィール
東 千茅/樫 里山制作団体つち式代表、全日本棍棒協会会長。1991年大阪府生まれ。2015年より奈良県宇陀市に移り住み里山生活をおくる。2020年、杉山を雑木山に育む二百年計画「里山二二二〇」を開始。2021年、里山制作と並行して棍棒の製造を始めるとともに棍棒飛ばしという競技を考案。著書に『人類堆肥化計画』(創元社)、『つち式 二〇二〇』(私家版)、『棍棒入門』(私家版)など。
遠藤麻衣 俳優・美術家。おしゃべりやDIY、演技といった手法を用いて、クィア・フェミニスト的な芸術実践を行なっている。自身の身体を用いて、パフォーマンスやドローイング、映像、執筆などさまざまな形式で発表している。2022年には文化庁新進芸術家海外研修制度でニューヨークに滞在。2018年より始めた丸山美佳との「Multiple Spirits(マルスピ)」では、ジンの出版や展覧会の企画もする。
横浜国立大学IUIホール(全学共用棟B【N7-2】)https://goo.gl/maps/VoPBkiCY7J1Lh2V98
横浜国立大学へのアクセス https://www.ynu.ac.jp/access/
レポート
耕作者の東千茅さんとアーティストの遠藤麻衣さんをお迎えして、「サバイブするという表現」と題してそれぞれの活動についての紹介と、来場者を交えて地方や都市でサバイブすることについてのディスカッションを行った。
東さんからは、奈良県大宇陀の里山で2015年から継続している里山での生活について紹介いただいた。東さんはさまざまな生き物が自身の欲望を渦巻かせながら殺生を行う里山で、その営みに巻き込まれたり、巻き込んだりしていることを豊かなものとして楽しみながら里山で暮らしている。また、現在はそのスケールが田畑での自給自足を中心とした生活から、里山の植生を針広混交林に変える山全体を中心とした活動にシフトしていると語っていた。間伐した木々から棍棒を切り出して、独自の棍棒競技の全国大会を開催するなど、生き物や木々とのやり取りから得た楽しみの赴くままに生きる東さんの柔軟さから、生きる悦びとしてのサバイブを学んだ。
一年間NYに滞在したアーティストの遠藤さんからは、現地のコミュニティーガーデンのリサーチ記録と、またアーティストが制作しながらどうやってサバイブするのかについて発表が行われた。コミュニティガーデンはアーティストの発表の場の一つになっているものもあれば、地元住民による園芸を通じた小さな実用的なコミュニティもある。目的も運営規模も様々ながら、どのガーデンも都市において閉じすぎず、開きすぎない半公共の形で人々の交接点となる場を作り出している。表現者である遠藤さんの目を通したガーデンの記録から、コミュニティガーデンがNYで実際に果たしている役割と、表現や集まりの受け皿としてのガーデンという特性を活かした場についてお聞きした。
その後来場者と行ったディスカッションでは、お二人にとってのサバイブの実践はどんな活動になるのかを中心に、都市において少しずつアナキスト的に振る舞ってみることや、Y-GSAの学生からも建築における都市農園の設定の仕方などについて、来場者の活動にもつながりながら広く議論が展開された。サバイブすることを、肩肘を張らずに緩やかな連帯をもって楽しく進めていくこと、またその仲間を競技や教室の場などで少しずつ増やしながら一緒に行っていくことが、お二人の表現者としての生き方にもつながっていると感じた。
レポート:湯田冴(Y-GSC)