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REPORT

IUI展2022-2023 「環境から身体へ うつしのワークショップ」 今井亜子(ダンサー|Y-GSC)・キヨスヨネスク(俳優|Y-GSC)

2023年3月3日(金)14:25〜17:35IUIホール、野外
  • 領域横断ワークショップ

Y-GSCに在籍するダンサーの今井亜子と、俳優のキヨスヨネスクによる身体を使ったワークショップ企画です。2名はそれぞれ、「振り付け」と「演技」の視点から、私たちを取り巻く環境中の多様な他者の存在に意識を向けて創作を行っています。身体を通して土地を外的・内的に捉えながら、様々な物質やモノとの類似性を考察します。観察した対象と、私たちの身体や声はどう似ていてどんなイメージがうつしだされるのか、参加者と一緒に探ります。                                   

今井亜子ワークショップ 「土を踊る」

参加者と大学周辺を散策しながら、その場所の土壌や地形から振り付けを考えるワークショップを行います。大学周辺の土をミクロな視点でよく観察し、それと私たちの体の似ているところを探してみることで、土に振り付けをつけられてみる体験をします。

キヨスヨネスク・ワークショップ 「肌理に潜る−声でうつす」

環境や空間における視覚的、聴覚的、触覚的観察を通して知覚される、対象の種々の物質性や肌理を、〈声〉に変換しうつしとる〈共感覚的表現〉のワークショップを行います。

※要登録 https://forms.gle/eS8apEPay1DPxhEr5

※定員約10名(雨天時屋内)

※筆記用具を持参してください。動きやすい、汚れてもよい服装でお越しください。

 

プロフィール

今井亜子 1997年生まれ。幼少期よりモダンダンスを始める。稲川千鶴、酒井幸菜、Nomade~s、大橋可也&ダンサーズなどの作品に出演。現在横浜国立大学大学院都市イノベーション学府博士課程前期在籍中。自然や日常的な人の身振りを抽出し身体で表現する作品を制作している。ヨコハマダンスコレクション2022コンペティションⅡファイナリスト。

キヨスヨネスク 1992年生まれ。俳優。演劇ユニット「humunus」(フムヌス)で活動。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府博士課程前期在籍中。土地やランドスケープを条件づけている種々の要素を観察し、それらをいかに声-身体を通してうつしとることができるか、その方法化と実践を行う。現在、福島県富岡町と東京との2拠点で活動。ユニットでの主な作品はツアー演劇「うつほの襞/漂流の景」、上演+展示企画「<砌と船>うつつ、揺蕩い」、映像作品「荒川平井住宅」など。

横浜国立大学IUIホール(全学共用棟B【N7-2】)https://goo.gl/maps/VoPBkiCY7J1Lh2V98

横浜国立大学へのアクセス https://www.ynu.ac.jp/access/

レポート


ダンスと演技という異なるアプローチの方法で環境を観察するワークショップをおこなった。

14:25-15:55 今井亜子「土を踊る」
まずIUIホールでワークショップの概要と目的を説明をした後、屋外の野外音楽堂周辺へ向かった。そこで参加者たちに、どのような身体の状態で土や木、草花など自分の身体の周りにある環境をうつしとるかの説明をした。例えば、地面に大量に落ちているどんぐりを踏みしめてみたり、野音の斜面に寝転がり重力に体を預けてみる、ということを一緒におこないながら、その身体の状態を覚えておくようにと伝えた。

WSの様子(写真:湯田冴)
WSの様子(写真:湯田冴)

その後二人ひと組を作ってもらい、お互いに環境をうつしとる身体を一緒に探してみるという時間をもうけた。その後、その観察した対象から切り離し、対象を覚えた状態の身体だけを持ち寄ることで、ひと組ずつ野音の平らな場所でそれぞれの「ダンス」を披露してもらった。

WSの様子(写真:湯田冴)
WSの様子(写真:湯田冴)
WSの様子(写真:湯田冴)

参加者それぞれの身体が初めての場に戸惑いつつも、のびのびと観察した対象を思い出しながら動いていることが見てとれた。天気にも恵まれ、偶然吹く風や枯れ葉が舞う様子もそれぞれの「ダンス」を演出してくれたように思う。また、初対面の相手の何かを表現する身体をじっくり見る時間も、その人を知る入り口としてなかなか無い貴重な経験であると感じた。また、参加者それぞれの身体を通して観察された野音周辺の草木や地形が、その身体を通すからこそ私の身体へも実際の肌触りが感じられるかのように近くに思えてくる、という体験も起こっていたように思う。

WSの様子(写真:湯田冴)

16:05-17:35 キヨスヨネスク「肌理に潜るー声でうつす」

 キヨスヨネスクさんの声のワークショップはIUIホールにておこなわれた。参加者は紙とペンを持ち、聞こえる音を5分間ひたすら記述する、ということを最初におこなった。記述の方法は、聞こえた音をオノマトペ的に書くもよし、「扉が閉まる音」など何の音かわかる場合にはその名称を書いてもよし、聞こえてくる方向を捉えて図のように記すもよし、ということで5分間皆静かに耳を澄ませた。

WSの様子(写真:湯田冴)

その後、どのような音が聞こえたかを共有した。聞いている音は同じでも、感じ取った感触や方向が人によって異なったり、一方である音を記述した線の曲がり具合が複数人で一致したり、ということも起こった。

WSの様子(写真:湯田冴)

その次に、IUIホール内やその外のスペースの中で一つ音を探し、それを自分の声(口腔内で出せる音)でやるとどうなるか、できるだけその音に近づけるということをやった。重要なのは、その際にその声を出すために自分の身体をどのように使っているかを観察することであるとのことだった。その後、それぞれ一人ずつ、実際の音とその人の声を聴き比べていった。何の音とも呼べないが確かにいつも耳のどこかで聞いてはいる、みたいな音が、他者の身体から出る音によって輪郭がはっきりして聞こえるようになったのが不思議だった。その対象の音だけを聞いている時よりも、人の出す声の肌理までもがその対象の音に存在しているかのように思え、身体と環境の境界線が曖昧になるような感覚になった。

WSの様子(写真:湯田冴)
WSの様子(写真:湯田冴)
WSの様子(写真:湯田冴)

二つのワークショップは環境の観察の仕方もそれをアウトプットする身体の使い方も異なるが、通して経験することで、その場に居合わせた他者の身体が知覚する世界をじっくり観察するということが体験できた。環境から身体へ、という一方向ではない、それぞれの身体がまた他者の身体へも影響し合うといった、これからも続いていくたくさんの生活の方向を少しづつ変え広げていくような時間になっていたのではないかと思う。

レポート:今井亜子(Y-GSC)

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